17-0504  (裏丹沢)丹沢主脈縦走 山行記

 

<はじめに> 

 東京の「明治の森高尾国定公園」から大阪の「明治の森箕面国定公園」を結ぶ総路線延長1,697kmの全東海自然歩道の中で最高標高地点『姫次<1,443m>』を通るメインコース「裏丹沢のみち」を歩く計画だ。このコースは2年程前から検討しながら、総距離と起点・終点へのバスの状況から日帰り単独山行での実現に至っていなかった。そこで今回はコースを分割した計画にして、高校同窓同期である吉田君の参加意思を得、今年初めて単独ではなくペアで歩くことになった。

 

<計画と準備>

 新松戸4時43分発、朝一番の電車を利用しても道志方面へのバスターミナルである三ヶ木からの午前一便の休日のバスに間に合わない。そして帰りのバスも午後一便のみで計画に余裕を持つ必要がある。これが平日スケジュールだと朝一番電車を利用すれば可能で、午後も二便あり山行8~9時間を確保できるのだが、双方の都合で今回は休日に歩くことにして、三ケ木から登山口まではタクシー利用で8時間の山行時間を確保する計画とした。

 また情報では「5月になるとヤマビルに注意」とある。2年ほど前にこの地域を数回歩いた経験とネット検索から、首巻用に塩漬けして乾燥させたタオル、そして靴・靴下・ズボン裾などへのスプレー型忌避剤「ヒル下がりのジョニー」、そして塩を用意して出かけた。

 

<相模駅から三ケ木そして焼山登山口へ>

 三ケ木へのバスの中では昼食を短時間で済ますべく、今回がはじめてのアルファ米・ドライカレーパックに水を注ぎ昼食の下準備ができた。

 5月連休中のこの日、相模湖駅から三ヶ木へのバスでは数人の登山客がいたが、今年2月に歩いた石老山登山口で下車してしまい、三ケ木バスターミナルでは既に道志方面へ朝一便だけのバスは25分前に出発しており、宮ケ瀬湖畔周辺方面へのバスも出たあとか、登山客は皆無であった。

 ”どうして?人気ないのかな?しかし静かな山行が楽しめそうだ”

 

 さあタクシーを探さなきゃと、出発前の準備不足を悔いながらバスセンター周囲を探せど見つからず。そこでセンターのスタッフの人に聞いて、センター内2階の事務所の人がタクシー会社に電話してくれた。

 三ケ木からタクシーで2年ほど前に歩いた双耳峰の石砂山や静かな山里の美しい風景を眺めながら走ること12分、焼山登山口に到着。あたりには登山客は”0”、静かな山行が出来そうだ。

 

<焼山登山口から焼山へ>

7時57分、計画より13分早く登山口を出発。正面には先ず最初の目標である焼山がそびえている。焼山まで標高差778m、これを頑張れば後はゆったりした尾根歩きが袖平山まで続くラクチン山行になるはずだ。ガンバルゾー!!

 昭文社「山と高原地図」をベースに作成した計画どおりのコースタイムで歩いても帰りのバス時間には20分の余裕しかない。途中の4カ所での通過チェックポイントを設定し、遅れが出てくればコース変更を計画しているが、少しでも余裕をも持って歩くべく先ずはコースタイムどおり10時山頂到着が目標だ、

 登り始めて暫くして、単独行の女性ハイカーを抜く。この人、どうやってここまで来たのかな? ”お先に失礼、ところでマイカーですか?” と声を掛けると、”いいえ、違います” の返事。この後、この方とは焼山山頂、そして黍殻避難小屋でも出合った。話しを聞くと、”三ヶ木からのバスで登山口まで来た。バスは座れない程の登山客だった”とのこと。

 ということは ”数十人は我々より40分程前に登山口に到着し、この丹沢主脈に入っているんだ。そうだよな、この好天気のゴールデンウイークの丹沢だもんね” と納得。

 心配したヤマビル、事前の対策が功を奏したのか、あるいは顔を出さなかったのか何事もなかった。同行の吉田君がいうに、”既に活動を始めていたとしても、一人とか二人グループは大丈夫。5人以上のグループに対し、ヤマビルが人間が発するガスを感知し吸血すべく飛び掛かるのは5人目以降だ。湿気が多い標高は通り過ぎたので、今日はもう大丈夫” とのこと。

 淡々とした一定の勾配の山道、足の疲れも感じることなく計画どおりのペースで歩けて、9時56分白樺林の山頂に到着。歩きは順調!!、ほぼ予定どおりだ

 

<焼山山頂>

白樺林の山頂からは展望は無く、目の前に鉄塔が。電波塔かな?とよくみると10m弱のテッペンまで螺旋階段が続いている。吉田は ”足がスクム” とコワゴワ登るが、こちらは ”(勤めていたころの)商売柄、怖くは無いけど” と頂上に上ると、大パノラマが広がっていた。 

 ”あの湖は何だ?” と地図を広げてコンパスで方角を確かめながら、宮ケ瀬湖とその後ろに連なる高取山~仏果山~経ヶ岳の山並み、そして右南方に高畑山から丹沢山に連なる丹沢の山並みの絶景を楽しめた。

 ここでも、出合ったハイカーは途中で追い抜いた2グループ3人のみと静かな山頂であった。

<焼山から黍殻避難小屋へのみち>

10時12分、ここからがこのコース一番の楽しみの尾根歩きだ。

 若葉と時折見えるツツジ、そして尾根みちの左右に樹林のスリット越しに広がる丹沢と道志の山々の眺めに、お互い ”いいな!!、いいな!!” の連発。素晴らしい歩きとなった。

 黍殻山は巻道があるが、計画通りに山頂に向かう。山頂へのみちは細尾根となっており、露出し複雑に絡んだ木の根っこだけの部分は足を引っかけたら墜落事故だ、慎重に一歩一歩進む。

 11時5分、大きい無人雨量計がある広い広場になっている黍殻山頂に到着。。

山頂では2人組のパーテイのみが昼食の準備中だが、眺望があるわけでもなく黍殻避難小屋で昼食とすべく先を急ぐ。

 ここから黍殻避難小屋へは案内標識「→大平分岐」を「→大平」と見間違え(?)、木材運搬用モノレールのルートに入ってしまったが、途中で下方に大平分岐の標識が見え、引き返さないで斜面を下りてショートカットで計画ルートに戻った。(道迷い①)

 11時33分、黍殻避難小屋に到着。

 ここは広場になっていて、周囲にはヤマサクラが満開。広場にはテーブルも設置され、避難小屋に宿泊しいろいろな使い方が楽しめそうだ。この日も家族連れが宿泊し連休を楽しんでいた。

 

 この広場で昼食休憩、バスの中で準備した初めてのアルファ米・ドライカレーもマズマズだ。

<黍殻避難小屋から姫次、袖平山へ>

 11時55分、黍殻避難小屋を最後の上りである姫次、袖平山に向って出発。

 

 ここから東海自然歩道・ロングコースへのショートカット用(?)に用意されているサブルートへの東野分岐を過ぎ、そして今回姫次と袖平山をピストンで経由し東野への下山地点と計画している八丁坂ノ頭を通過。 ”ほぼ予定通りのペースで体調もOK、ここからショートカットして下山する手は無い”

 

 さらに上ってゆき、東海自然歩道最高標高<1,433m>地点に到着し、ここの通過記録を写真に収める。

 

 12時49分、姫次の展望ポイントに到着。

 カラマツ林越しの丹沢主稜(丹沢山~蛭ヶ岳~檜洞丸)の絶景、

この日の素晴らし尾根歩きのハイライト、イイねえ~!!

 

 ベンチに座り絶景を楽しむ登山客を尻目に早々と袖平山へ向かい、13時7分、袖平山に到着。ここまで、ほぼ計画通りのペースだ。

ここからの丹沢主稜の展望も素晴らしい!!

 <袖平山から東野へのバリエーションルート>

 さてどのルートで下山するか。

 当初の計画通りに八丁坂ノ頭まで引き返し東野へ下山するとして、コースはよく踏まれていて標識類もよく整備されているようだが、日頃から下りが苦手でコースタイム通りに歩けてバスに間に合うか不安は残る。

  袖平山から直接東野へのルートは国土地理院1/25,000地図には表示されているものの、昭文社「山と高原地図」地図では赤破線表示の登山道すらも示されていない。またヤマレコの地図検索では踏み跡の実績は極く僅か。しかしこの日は八丁坂ノ頭まで引き返す分だけ時間的な余裕がある。

 吉田君と協議の結果、袖平山から直接下山することに決定。

 

ここからのルートは道案内の標識も無いバリエーションルートと予測され、携帯しているGPSに計画ルートをインプットし、ナビとして利用できるように準備は出来ている。絶対大丈夫だ!! 

 まずは山頂からの下山ルートを示す案内標識は朽ちていたが、かすかに「エビラ沢へ」と「高野へ」の2枚が読み取れ、最初にこっちだとトライしたルートは帰って調べたら「エビラ沢へ」のルートだったようだ。少し急斜面を降りたが、途中でリボンも踏み跡も無くなり危険と判断し山頂に引き返した。(道迷い②)

 

 道探しに18分ロスしたが13時30分、山頂付近に地をはう植物に覆われた踏み跡とその向こうにはっきりした踏み跡を吉田君が発見。チャンとした道があるじゃない!ずっと続いていてくれ!と期待と不安を抱えて歩き始めた。

 そこから、急斜面ではあるがハッキリした踏み跡もあり、正面の道志の山々を眺めながら気持ちよい尾根道、標高差500mを45分で快調にかけ下りた。

ところがどっこい、標高920mあたりで急斜面の杉(かな?)樹林帯の中でまたまた道が判らなくなり、あとは倒木を乗り越えたり避けたりしながらGPSでの計画ルートに近づく方向に2人はバラバラに急斜面を駆け下りる。はるか下まで続く樹林帯の中でお互いの姿は見えなくなり大声で呼び合い、道迷いから18分経過し標高差約180m下ったところで落ち合うことが出来た。

 そこで、自分たちがいる場所と計画しているルートの位置と方向を地図上でジックリと読み取り、目指す方向を確認して下山を再開。

そして一旦は計画ルートの踏み跡に復帰できた。

 しかし、またまたルートを外し沢を越えたりしながら、15時17分、計画していたルートとは別の林道に出ることができた。(道迷い③)

 両手を挙げて、”出れた!! バンザーイ!! 楽しかった!!”

 

結局、道迷いから1時間経過し標高差362mを下りたバリエーションコースとなった。

 

あとは東野のバス停まで40分、ほぼ当初計画の時刻に下山することができた

<おわりに>

 5月連休のなか裏丹沢は登山者も少なく静かな歩きが出来て、焼山の展望塔や姫次からの丹沢の山々の絶景、そして焼山~黍殻山~姫次~袖平山の新緑のゆるやかな尾根道歩きを満喫できた。

 

 袖平山から東野への下山ルートでは道案内や踏み跡も無いバリエーションルートに迷い込み、標高差362mを1時間で脱出することが出来て、最終バスにも間に合い結果オーライの楽しいそしてチャレンジングな思い出に残る山行となった。 

 この日から丁度一か月前の4月4日、同じく東海自然歩道<静岡>の『長者ヶ岳コース』を歩いた際も全く同様のことを経験した。その時は山頂からの絶景を楽しんだあと、標高差387mの急斜面バリエーションルートに迷い込み3時間半を要して脱出できたが、最終バスには間に合わなかった。

 

 そしてどちらもパニックにならず冷静に対応できたのは、一つにGPSで常に自分の位置と計画ルートが確認できていることであった。今後とも更に有効的に計画段階そして山行段階に活用してゆきたい。